書評 第11回小説現代長編新人賞奨励賞『あの頃トン子と』

第11回(2016年)小説現代長編新人賞奨励賞受賞作 『あの頃トン子と』 城 明 養豚業を営む40歳目前の洋一が、発育の悪い子ブタにトン子と名付け、「お手」や「お回り」などの芸を教えます。すると意外にもトン子は数日で身につけてしまいます。トン子にピンクのリボンをつけ、洋一は可愛がり始めます。 そこへ、幼馴染のマナブが帰郷してきます。頭のよかった彼は高校卒業後、家業の酪農業を嫌い、東…

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書評 第11回小説現代長編新人賞 『お師匠さま、整いました!』

第11回(2016年)小説現代長編新人賞受賞作 『お師匠さま、整いました!』 泉 ゆたか 出版されるにあたり、大幅改稿されたらしく、選評と違っているところが見られます。 年の離れた算術家の夫に先立たれた24歳の桃を語り手に、桃の寺子屋の二人の生徒――両親を災害で亡くした15歳の春、良家の才ある子女・鈴――を描きます。 和算を扱いうのですが、師匠の桃が苦手で、春と鈴が才能をめき…

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書評 第3回新潮ミステリー大賞 『夏をなくした少年たち』

第3回(2016年)新潮ミステリー大賞受賞作 『夏をなくした少年たち』 生馬直樹 小学六年の拓海、啓、雪丸、国実は小学校時代最後の想い出づくりのために、町の花火大会の日、立ち入り禁止の山に入り込み、そこで国実の4才の妹殺害事件に巻き込まれます。 その犯人探しがミステリーとなるのですが、それ自体はやや唐突で、動機も弱く、伏線もわかりやすく、リアル感がありません。 しかし、この4…

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書評 第23回日本ホラー小説大賞優秀賞 『きみといたい、朽ち果てるまで』

第23回(2016年)日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作 『きみといたい、朽ち果てるまで ~絶望の街イタギリにて』 坊木椎哉 タイトル通り「朽ち果てるまで」の展開には驚きましたし、そこからの表現力、描写力の高さに惹きつけられました。 無法地帯の町「イタギリ」で、ゴミ集めの仕事に従事する無国籍の少年晴史。ゴミの中には死体も含まれ、晴史が組む竹林老人は管理組合の職員から優先的に賃金のいい死…

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書評 第8回朝日時代小説大賞 『慶応三年の水練侍』

第8回(2016年)朝日時代小説大賞受賞作 『慶応三年の水練侍』 木村忠啓 勤王派と佐幕派がせめぎ合う幕末に、17年前の火薬爆発事故の禍根を抱く若者と、藤堂藩砲術師範の市川清之介とが水術で対決します。 そんな悠長なことをしてていいのかと思いますし、政治思想をコロッと変え勤王派に寝返った藤堂藩の裏事情に絡めていますが、少々わかりにくい。 ただひたすら、清之介が伊賀者について水術…

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書評 第6回アガサ・クリスティー賞優秀賞 『花を追え』

第6回(2016年)アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作 『花を追え 仕立屋・琥珀と着物の迷宮』 春坂咲月 少女マンガ的な始まりで、これがアガサ・クリスティー賞? と危惧したが、どんどんおもしろくなっていきました。 篠笛教室という渋い趣味の、飾り気のない女子高校生八重と、着物をこよなく愛するイケメンの琥珀の恋愛に、八重の父親の冤罪と八重自身の謎に迫るミステリーをかけています。 …

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書評 第23回日本ホラー小説大賞 『夜葬』

第23回(2016年)日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作 『夜葬』 最東対地 視点があちこち移り読みにくく、独りよがりの大袈裟な描写で白けさせる。素人っぽい文章なのですが、栃木の廃村の恐ろしい風習にスマホのナビゲーションとLINEを髣髴とさせるアプリを絡め、現在進行形のホラーに仕立てたアイデアがいい。 「どんぶりさん」という風習も実際できるかどうかはともかく、十分に怖さを備えていて、…

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書評 第96回オール読物新人賞 「姉といもうと」

「姉といもうと」 嶋津 輝 第96回(2016年)オール讀物新人賞受賞作 幸田文の「流れる」などの作品群に惹かれて、女中をしている20代の里香は、妹と二人暮らし。両親はすでに他界しています。 とりたてて事件が起こるわけでもなく、ただ日常が続いていく小説です。 しかしページをめくらせる仕掛けが随所に見られます。幸田文、家政婦の仕事、手指が欠損した妹、その妹のおおらかな気性。そし…

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書評 第96回オール読物新人賞 「ひどい句点」

「ひどい句点」 佐々木 愛 第96回(2016年)オール讀物新人賞受賞作 よくある不倫小説をキレイに描いた作品で、受賞するほどの筆力かな、と首をかしげました。 新幹線の中で偶然知り合った10歳年上の新聞社勤務の小玉に、就活中の章子は惹かれていきます。 彼は取得に乗るときは裸足にならないと事故を起こすとかたくなに信じていて、これがキーポイントとなります。 裸足、句点とリン…

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書評 第53回文藝賞 『青が破れる』

第53回(2016年)文藝賞受賞作 『青が破れる』 町屋良平 いい意味で「調子のいい小説」です。ボクサー志望の秋吉(シューキチ)は、友人のハルオの彼女――とう子――の見舞いに行きます。彼女は難病で、何度も危篤を乗り越えています。 「滑稽でなければ人といられない」ハルオは、事態の重さに耐えきれず、秋吉に見舞いを頼み、秋吉もまた一人でとう子を見舞うようになります。 現実にはありえ…

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