書評 第41回すばる文学賞「光点」

第41回すばる文学賞受賞作 「光点」 山岡ミヤ 中学を卒業し、母親に言われるままに町の工場地帯のひとつに通う実以子。母親に虐げられ、親しい友人もおらず、ただ家と工場を行き来し、たまに隣町に買い物に行く日々。すべてが受け身の人生を送る若い女性です。 そんな彼女が参拝者がいない山の神社でカムトと名乗る男性と知り合います。何かが起きるかと思いきや、彼は妹との思い出に生きていて、そこから逸…

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書評 第49回新潮新人賞「百年泥」

第49回(2017年)新潮新人賞受賞作 「百年泥」 石井遊佳 交際している男に貸した金から多重債務者に陥った「私」は、元夫から斡旋されたインド・チェンナイでの日本語教師の口に乗ります。 赴任して三か月半後、百年に一度といわれる洪水によってアパートに閉じ込められます。ようやく水が引き、職場に向かうアダイヤール川にかかる橋にたどり着いてみれば、泥をかく人々がさまざまなものを引き当ててい…

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書評 第49回新潮新人賞「蛇沼」

第49回(2017年)新潮新人賞受賞作 「蛇沼」 佐藤厚志 仙台の高級靴店に勤める恭二は、農家の二男坊。しかし、農業を拒否し、家族と反目しあうも、故郷の町を抜けられません。 町は徳宝寺と大沼蒟蒻店が何かとぶつかり会っています。恭二は寺の跡取りの裕瞬、大沼家と関わり深い大沼セイコと仲良くし、ともに遊ぶ仲です。しかし、セイコが蒟蒻店の従業員ケイスケによって辱められ、その直後、沼に落ちて…

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書評 第24回日本ホラー小説大賞優秀賞『奇奇奇譚編集部』

第24回(2017年)日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作 『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』 木犀あこ 幽霊が怖いけど見えてしまう作家・熊野惣介(ゆや そうすけ)と、見えないけど幽霊が大好きな編集者・善知鳥(うとう)は、怪奇小説誌『奇奇奇譚』に掲載する小説のネタ探しに、心霊スポット巡りをしています。 その取材中に、姿かたちは異なっているのに、同じような音を発する幽霊に連続して…

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書評 第27回鮎川哲也賞『屍人荘の殺人』

第27回(2017年)鮎川哲也賞受賞作 『屍人荘の殺人』 今村昌弘 ハズレが少ない鮎川哲也賞受賞作ですが、今回も楽しませていただきました。 大学のミステリ愛好会に所属するミステリ好きだけど地味な葉村譲は、会長にして探偵志望の自信家・明智恭介に振り回される日々。明智は無理矢理映画研究部の心霊現象撮影を目的とした夏合宿に参加しようとします。合宿先は映研OBの父親が所有する別荘で、明智は…

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書評 第54回文藝賞「おらおらでひとりいぐも」

第54回(2017年)文藝賞受賞作 「おらおらでひとりいぐも」 若竹千佐子 老いをテーマにした新人賞受賞作というくくりでは、芥川賞候補にもなった第48回(2016年)新潮新人賞受賞作『縫わんばならん』には及ばないものの、これはこれで力強い老人文学といえるでしょう。 数年前に夫を亡くし、子どもたちとも疎遠になっている74歳の桃子さん。東京に出てきて50年間、忘れていた故郷の東北弁がよ…

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書評 第13回「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉『僕が殺された未来』

第13回(2014年度)「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉 『僕が殺された未来』 春畑行成 「このミステリーがすごい!」大賞創立15周年記念の超隠し玉のなかでは、唯一まともな作品でした。 おとなしく、平凡な大学生「僕」高木正一は、ミスキャンパスの小田美沙希が失踪したと、親友の須藤健太郎から聞かされます。 アパートに戻った「僕」は、60年先の未来からやってきた中三の大塚ハ…

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書評 第10回「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉 『陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた』

第10回(2011年度)「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉 『陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた』 田中静人 この作品を出版した理由がさっぱりわかりません。 「父親と兄を小学生の女の子が殺す」というワンアイデアだけで突っ走った作品で、リアル感はなく、ティーンエイジャーの心理も薄い。 そもそも別の家庭の子どもが、大地、空、光という名前というのはありえるでしょうか。こ…

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書評 第12回「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉『ホテル・カリフォルニアの殺人』

第12回(2013年度)「このミステリーがすごい!」大賞超隠し玉 『ホテル・カリフォルニアの殺人』 村上 暢 アメリカ南西部のモハーベ砂漠にあるホテル・カリフォルニアが舞台。密室殺人を扱う本格ミステリです。 自称ミュージシャンのトミー(富井仁)は、ヒッチハイクの途中、ドライバーのジミーの気まぐれで砂漠の中に忽然と現れた「奇跡の泉」を見物するために、モハーベ砂漠に入り込みます。しかし…

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書評 第6回ポプラ社小説新人賞『パドルの子』

第6回(2017年)ポプラ社小説新人賞受賞作 『パドルの子』 虻川 枕 ほんの少し現実と違う物語世界を構築しています。丁寧に文章がつづられていて、現実世界とずれた別の世界をのぞいている感覚で読めます。 しかし肝心の「パドル」が甘い。これでは願い事がなんでも叶う装置になってしまって、物語をゆるくしています。まるで「ドラえもん」のよう。 カナヅチの主人公がパドルするにはかなりの勇…

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