小説すばる新人賞出身の三人の作家による鼎談なのですが
まとまりがないんですよね。
あまり読むべきところもないです。
そのなかで「新人賞を受賞する人とは」というテーマの部分を抜粋します。
荻原 ぼくも水森さんも、一作目で受賞しちゃってる嫌みでラッキーな二人なので、これから応募しようという人たちの参考にはならないかもしれない。
花村 いや、新人賞を受賞する人は、基本的にそんなに時間かかってないと思うよ。
水森 「作家になりたい」と強く思いすぎている人って、逆になれないんじゃないかな。なりたい気持ちが先立って、自分自身のために書いていることが、悪い形で読み手に伝わってしまう気がします。
荻原 書くことよりも、「作家になる」ってことが目的になっちゃうということですかね。
水森 読み手が気持ちいいものは書いてないんじゃないかな。
花村 自分のことを書かない、これがコツだね。自分の人生やら、そういうものをいったんうっちゃっといて、ちゃんと虚構をつくるということ。
荻原 職業から入るというのは間違いですよね。ときどき、聞かれるんです。「印税ってどれぐらいなの」「僕もやろうかな」とかって(笑)。もう何か、ビジネスとか、金銭……もうける手段として考えてるところがある。そこまでいかなくても、作家というポジションに憧れているみたいな感じだと、ちょっとそれは違うんじゃないかなと思ってしまう。
花村 おれは、完全に出だしが職業選択の一つだったね。ただ、やってるうちにほんとうにつらくなってきて、七年目くらいで、もうやめようと思った。
というふうに金銭と結びつけると、作家は全然報われない。
だから花村萬月は不動産屋のほうがいいような気がしてきた、と言います。
花村萬月に真実をついている発言が多く、
水森サトリはまだ新人だからよくわかっていないうえに
好きなことを好きなようにしゃべっているだけで、
その中間にいる荻原浩が両方の意見の間を右往左往する中間管理職。
という、別の読み方が楽しい鼎談でした。
【花村萬月 プロフィール】
1955年東京生まれ。
1989年「ゴッド・ブレイス物語」で第2回小説すばる新人賞受賞。
1996年『皆月』
同年「ゲルマニウムの夜」
【荻原浩 プロフィール】
1956年生まれ。
1997年「オロロ畑でつかまえて」
2005年『明日の記憶』
【水森サトリ プロフィール】
1970年東京生まれ。
2006年「でかい月だな」
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