「椅子」 牧田真有子
「東京キノコ」のところでも書きましたが 奨励賞受賞は幸運に恵まれたと思います。 ふだんの選考会でしたら簡単に落選するレベルを 拾い上げてくれたのですから。 特にこの「椅子」の受賞は疑問。 さっぱりわかりません。 末期がんを患っているおじさんに対する「私」の感情。 「椅子」を作り続けるしかない焦り。 家族旅行の最中に投身自殺した叔母。 飄々と世界を渡り歩く元カレ。 放火現場に残された財布。 なんとなく文学コードをつなぎ合わせ 場面もどこからか引っ張ってきたかのようなつぎはぎで 新鮮さがまったくありません。 「椅子」というコードを使い 最後に叔父の膝に座るというエピソードを作るのなら 「私」の身体感や居場所などを もう少し丁寧に作り上げるなど なにか工夫が必要だったのでは。 |
