「春の手品師」 大島真寿美
空き地に来ていた手品師に惹かれて 高一の「私」はついていきます。 手品師は、 「手品なんかで食っていけないよ。 ほんとの仕事は向日葵の種蒔き」 と言いながら、私といっしょに歩き出します。 やわらかい文章に時折、ドキリとするフレーズが続きます。 特に家族を考えさせられる。 生れ落ちたときから、人間はなぜ家族のなかに放り込まれるのか。 もちろん誰かの世話にならないと 生まれたばかりの人間は生きていけないという 事実はあるとしても、家族を別の角度から 考えさせる力を持っている小説です。 しかも繊細で危ういバランスを保つ小説が ラストでパアッと明るさを放ちます。 誰かと知り合うことで、人生が生きやすくなる物語。 |
『ふじこさん』
大島真寿美

