『声も出せずに死んだんだ』 長谷川 也
19歳の吉永千裕はネット上のキャラクター・レオナを復活させるべく、ある計画を立てます。そのためにはレオナの身代わりの女性が必要で、その女性を誘拐します。 まずレオナという存在がわかりにくい。外見とわずかな設定が決まっているだけで、あとはネット上でみんなが勝手に小説を書いているそうです。「殺された」「蘇えさせる」という千裕の言葉だけが独り歩きし、読者には全く伝わってきません。ですから物語に感情移入できませんでした。 その上、レオナが殺されたことが、自殺の理由になるといわれても、ただの「イタイ人」にしか読めませんでした。 ただ自殺者の心理や二次元のキャラクターに熱を上げる心情については、客観的に分析し、それを小説の題材にできていると感じました。それが肝心のレオナには適応できていないのが残念です。 最後の千裕の計画の真相は唐突で、戸惑いました。星来がこれに気づく何かのきっかけが欲しかった。 しかし、千裕と星来のロードストーリーはそれぞれの思惑が全く重ならず、それはそれでおもしろく読めました。東京を舞台にしなかったのもいい。地方から地方へ。あくまでも「中央」には入りきれない若者のストーリーとしてきちんと成立していました。 |