『窓から見える最初のもの』 村木美涼
| 4つの群像劇がある出来事に結節していく意欲作です。 半島の先にある心療内科に通う短大生の相沢ふたばは、クリニックで大学生の湯本守と知り合います。3回だけ言葉を交わした彼は、ふっつりと姿を消してしまい、クリニックの看護師に尋ねても誰も知らないといいます。 壁紙販売会社社長の藤倉一博は、美術鑑賞が趣味です。20余歳で夭折した画家・島崎兵衛の幻の「腕が6本ある女」の絵を探し回って7年。ようやく見つけ出したものの、贋作ではないかと疑いが浮上します。 不動産会社営業の連城美和子は、喫茶店にする店舗を探している顧客・長谷部悠にぴったりの物件を紹介します。半年間探し求めていた物件に出会ったものの、長谷部はまた煮え切らない態度をとります。それには父親にまつわる深い事情がありました。 自動販売機会社のサラリーマン・御通川進(みつかわ すすむ)は、免許更新をする際に、警察に「御通川進」に行方不明人捜索願が出されていると知らされます。知らない間に自分が家出人になっていました。 全くばらばらの物語が静かに進行していきます。どれも人生の重大事が発生しているのですが、とても静かな筆致のため、日常生活の延長に感じられます。しかし、物語の躍動感は伝わってきて、それぞれの謎にのめりこみました。 突出したキャラクターはいないのですが、それぞれの心情を丁寧に追っていくため、リアルな人物像になっています。もう少し作りこめば、宮部みゆきの筆致に似ているでしょうか。 長谷部の物語の語り手を不動産会社営業ウーマンにしたのも、素人離れしています。第三者が昔の出来事を知る過程をたどることで、読者と同じ視線で過去を探ることになります。 惜しむらくは、もう少しドラマチックなミステリーに仕立て、それがはっきりと読者に伝わるような描き方ができたことでしょう。ビリヤードのようにひとつボールが押されると、別のボールに当たって動いてという趣向なのですが、静かすぎてわかりにく。その静かさがこの著者の持ち味だとわかっていて、全編にわたってそれが好ましいのですが、クライマックスでは物足りなさも感じました。とても残念です。 でももっとこの方の小説を読んでみたいと感じました。 |
