「遊ぶ幽霊」 兎束まいこ
死んでいる兄弟が本を読み続ける物語。 静かな屋敷で日がな一日本を読み、おなかがすけば食べ、読む本が尽きると本屋に行きます。 兄の柾木は箸で紙魚をつぶし、捨てます。それを弟は拾って屑籠に捨てます。そして、時に子どもに還ってしまいます。ややファンタジーめいた小説です。 お金は蔵の箪笥の一番上に引き出しに毎朝たくさん入っているというのが、現実的でおかしい。 途中で猫が登場し、紙魚を食べてくれるようにまでなります。狼も現れますが、ただ寝ているだけ。 どこまでも本読みにとって至福の時間が過ぎていきます。 埃が溜まり、それを掃除しなければならないのが、唯一の労働です。 ただ、物語がそれだけに終始し、何も始まらず、何も終わらない。世界が広がらない。 言葉の使い方や文章がこなれているし、小説を書くことに慣れているのですが、それ以上でもない。もっと独創性を感じさせる兄弟の物語にできたのではないでしょうか。どこか物足りなさを感じました。 |