「月と林檎」 伊藤万記
| 肩の故障で野球ができなくなった女子高校生の早希は、美術の課題で残され、講師の塔田と距離が近くなります。 静かな筆致で描かれる女子高校生と教師の物語ですが、怪しい雰囲気 になりそうなところで留めています。それがこの小説を独自のものにしています。 塔田にしても結局は、才能がありながら画家への道を絶たれた姉への想いを抱いている、というありきたりな設定なのですが、とにかく絵のことしか考えておらず、それが成功しています。 同じ生徒のスケッチを何枚も残していたり、アパートの部屋に早希を連れ込んだりしても、いやらしいことは全く考えていません。本当に絵のことだけしか頭にありません。そして何かに取りつかれたかのような、不思議な魅力をたたえています。 著者は別名義で第32回(2016年)太宰治賞を受賞した実力の持ち主です。今後はどんな世界を読ませてくれるのでしょうか。 |
📖 「小説新潮」2017年5月号