「アクロス・ザ・ユニバース」 白尾 悠
| 父親に抑圧された女子高校生の智佳がちょっとした冒険を試みる、完成度の高い受賞作です。 地元の国立大学もA判定の智佳は、大好きなホラー映画監督の講演会を聞くために、上京します。その高速バスのなかで、それまで接点のなかった同じ学校のギャル優亜と一緒になります。 ホラー映画マニアで、妄想が現実に紛れてしまうほどビジュアルがクリアに浮かぶ智佳が、優亜が振られた男への復讐を企てる伏線として活きています。 それまで元気よく自己中だった優亜が、男の前で萎縮してしまったり、作戦がぐずぐずになってしまうのがリアルで、成功しています。 今時、こんな骨太な父親がいるかどうかが疑問ですが、自分の思い通りにならないと大声を上げて暴力をふるう男の造形も、うまい。もう少し子どもじみていたら、リアルだったでしょうか。 ラストに向かって筆の勢いが増し、一気に読ませます。主人公とともに作者がどこに向かって走っていくのか、見守りたくなりました。 |
📖 「小説新潮」2017年5月号