書評 第15回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞 『縁見屋の娘』

第15回(2016年)「このミステリーがすごい!」大賞優秀受賞作
『京の縁結び 縁見屋の娘』 三好昌子

タイトルから予想される、仲人による人情話ではなく、怪奇時代小説でした。

京の口入屋「縁見屋」は、男児が生まれず、娘は26歳で死ぬといいます。実際、一人娘のお輪の母親も祖母も曾祖母も生んだのは娘一人で、26歳で突然死にました。

そんな祟りのような、呪いのようなものにおびえながら、気丈に父親と店を守るお輪も18歳。縁談はなく独り身で、幼馴染の徳次が想いを寄せるのは知ってはいても、それを受けることも意に染まらない……という微妙な気持ちです。

そこへイケメンの修行者帰燕が現れて、お輪の心はさらに揺さぶられます。

そして縁見屋の祟りを巡り、お輪と帰燕はさらに近づいていきます。

お輪の曾祖父・正右衛門は材木商を営んでいて、宝永の大火によって一代で財をこしらえましたが、それを周囲の人々の復興に投げ出し、火伏堂を建て、町の安寧を祈願しました。

材木屋は閉め、その代わり、口入屋を始めました。

物語、設定の隅々まで細やかに気を配って書かれています。お輪の揺れる心にしても、縁見屋が周囲の人々の尊敬を集めつつも、80年たつと人の心は離れて、祟りを恐れ、お輪を化け物よばわりする人もでてきます。

そして正右衛門が人々に尽くした理由も、とても細やかです。贖罪の意識や恐怖など、正右衛門が抱いた想いが伝わってきます。

島村冬吾とその敵討ちは余計だったと思いますが、それ以外の伏線やガジェットはとてもよくまとまっています。

さらさらと読ませる文章は着実に物語を進ませます。リーダビリティが高く、何度も同じような心情を綴っても淀みがありません。

ミステリーでもサスペンスでもありませんが、「このミステリーがすごい!」大賞はうまい作品は救い上げてくれるのですね。そのため、残念ながら優秀賞だったのでしょう。


『縁見屋の娘』

三好 昌子  宝島社文庫

by ヨメレバ


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