2017年02月01日

書評 第3回新潮ミステリー大賞 『夏をなくした少年たち』

第3回(2016年)新潮ミステリー大賞受賞作
『夏をなくした少年たち』 生馬直樹

小学六年の拓海、啓、雪丸、国実は小学校時代最後の想い出づくりのために、町の花火大会の日、立ち入り禁止の山に入り込み、そこで国実の4才の妹殺害事件に巻き込まれます。

その犯人探しがミステリーとなるのですが、それ自体はやや唐突で、動機も弱く、伏線もわかりやすく、リアル感がありません。

しかし、この4人の造形と、この時代の少年少女の心理の移り変わりを読ませます。頭もルックスも性格もいい啓に憧れると同時に諦めを抱く拓海は、繊細で優しい。忙しい両親に代わって妹の面倒を見る国実はいいお兄ちゃんで、しかし友人との付き合いの間に挟まれ、苦しみます。傍若無人な雪丸はやがて皆から相手にされず、「幼い少年」とレッテルを貼られます。

小学6年というタイムリミットのなかで少年たちが生き生きと描かれ、『Stand by me』を髣髴とさせる夏休みの少年物語として立ちあがっています。小説すばる新人賞受賞作のような読み応え。

第2部で20年後の現代となり、刑事となった拓海がある男の殺害事件の担当となりますが、それが20年前の少女殺害事件の真相へと繋がっていきます。

現代の物語は予定調和で、殺人事件の犯人も、物語の展開も読めてしまうのが残念です。

ただ4人のこれからを展望させる閉じがとてもいい。人と人との関係性をリアルに、繊細に描いたデビュー作なので、次作にも期待がかかります。



posted by かつき at 17:00| 新人賞受賞作書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする