2017年01月04日

書評 第23回日本ホラー小説大賞優秀賞 『きみといたい、朽ち果てるまで』

第23回(2016年)日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作
『きみといたい、朽ち果てるまで 〜絶望の街イタギリにて』 坊木椎哉

タイトル通り「朽ち果てるまで」の展開には驚きましたし、そこからの表現力、描写力の高さに惹きつけられました。

無法地帯の町「イタギリ」で、ゴミ集めの仕事に従事する無国籍の少年晴史。ゴミの中には死体も含まれ、晴史が組む竹林老人は管理組合の職員から優先的に賃金のいい死体処理を回してもらえるため、その仕事が多い。

イタギリにも歓楽街があり、その極楽通りに似顔絵かきの少女が座っています。いつからか晴史はこの少女に惹かれるようになりますが、彼女もまたイタギリの多くの女や少女がそうであるように売春を目的とした「物売り」の一人です。

どこまでいっても暗く、救いのない人々の営みが連なり、連続殺人事件が起き、さらに少年の未来へのささやかな希望も現実の前につぶされていきます。

セクシャルマイノリティの竹林老人、小説家志望の樹戸、記憶障害をもつ月丸、元ヤクザの住職など、濃いキャラクターが物語の彩りとなっています。

貧困と無知のために少女は混乱し、やがて自ら命を捨てます。そんな少女に少年は寄り添い続けます。

オリジナリティはあまり感じませんでしたが、ひとつの世界を描き出そうとする力、それを支える筆力を感じさせる受賞作でした。



posted by かつき at 17:00| 新人賞受賞作書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする