「西国疾走少女」 一木けい
大賞受賞作とかぶる要素――不幸な生い立ち、恵まれない家庭、たったひとつの救いは男の存在――がもったいないのと、額縁小説になってしまっているのが残念。イカのエピソードのプロローグとエピローグで損をしています。構成的にも物語が小粒になっており、内容と呼応していません。これは要らないでしょう。 クラスメイトと付き合うまでのお互い探り合いの期間をリアルに描いています。 恋愛だけではなく、彼女の背負っている人生が生々しい。毒舌の叔母や落ちぶれた父親など、中学三年の主人公にはどうしようもない現実が迫っていて、とてもいい。 やや荒削りなところがありますが、語りのうまい作家になりそうな予感を感じさせる受賞作です。 |
📖 「yomyom」 2016年6月号