『ドール』 山下紘加
ラブドールを偏愛する中三男子の歪んだ心理を、丁寧な描写で描いています。 シングルマザーと狭いアパートに暮らしているのに、突然、結婚した姉が帰ってきて部屋から追い出されたり(リビングでテント生活になる)、同級生からいじめられたり、とまったく居場所が見いだせない卓巳。 その反動として、また幼少の頃からの人形遊びから発展して、「人形」のユリカとの世界に耽溺していきます。 わからないでもないですが、気持ち悪い。 卓巳の歪み方は半端ではなく、クラスメイトから借りた本を使って、その人を窮地に立たせるなどは、もう理解の範囲を超えています。 しかし、リーダビリティのうまさ、描写の的確さは新人作家離れを感じます。 これを若い女性作家が書いたのに、また驚かされました。今後の活躍に期待がかかります。 |