「監獄舎の殺人」 伊吹亜門
ミステリーズ!新人賞では珍しい、歴史ミステリー。明治初期の京都、府立監獄舎で元騎兵隊士・平針六五が、処刑日に毒を盛られます。 司法少丞・鹿野師光が語り手となり、司法卿・江藤新平とともに謎に挑みます。 犯人はすぐに推理できるのですが、死罪を直前にひかえた罪人をなぜ殺すのかというホワイダニットを、犯行動機から探ります。 明らかになる犯行理由も「なるほど」と納得でき、そこからまだ読ませます。 ネタバレですが、穏便な性向に思えた鹿野、横暴に思えた江藤新平がそれぞれ鮮やかに反転する展開がおもしろい。 また幕末の動乱を引きずる明治政府、京都の雰囲気を、しっかりと伝えて、時代小説家としても読み応えのある小説を書くのではないかと思われました。 |
📖 「ミステリーズ!」 vol.73