「ヴェジトピア」 杉本裕孝
自分のことを植物だと言うフシギちゃんの琳子と、花屋の夫との往復書簡を中心に(しかも偽名)、彼女の中で新しい生命が成長する過程を追います。 この妊娠というか、受粉というか、胎芽のようなのですが、しかし人間になっていきます。やはり妊娠でしかないのでは。 そういう感覚のズレがイタイまま、読者は琳子に付き合わなければならないのが苦痛でした。 幼なじみの夫との生活を他人行儀に送りながら、一方で同級生の大口を受け入れてしまうのは、フシギちゃんを通り越して、ちょっとおかしいんじゃないかと頭を抱えました。 一方で清掃サービスに訪れる家の植物状態となった老婆のことも描かれます。 繊細なようでいて、無神経なんですよね、この小説は。 どこまでいっても動物と植物の違いを感じずにはいられない。それはおそらく著者の意図したものと正反対のものではないかと思います。 どこかでピタッと琳子から植物感覚が伝わってくるかと期待していましたが、それもありませんでした。私はこの小説のいい読者ではありませんでした。 |
