「サバイブ」 加藤秀行
東京の外資系エリートの人生観と生活、そこから落ちこぼれたものの、どこかでいつか挽回できそうな「俺」を軽妙洒脱に描いています。 00世代の「なんとなくクリスタル」系ですが、もっと嫌みがなく、格差の下の方のことは考えたこともないくらいの軽さ。その軽い筆致が魅力で、時にシャレています。 外資系銀行に勤める友人宅に転がり込んだ主人公ダイスケは、銀座のバーで働きながら、主夫をしています。同居人は家主の亮介とやはり外資系金融会社に勤めるケーヤ。 そこにケーヤの同僚のレナが入り込み、ダイスケと付き合い始めます。 しかし男たちの均衡は崩れず、不思議なバランスを保ち続けます。今の時代の空気が表象されています。この後、ダイスケはレナと同棲し始めるのですが、それでも彼はおそらく自分のスタイルを崩さない。四人が四人とも自分らしさを最後まで失わず、軽く貫き通します。 崩れるのはもっと大きな力によってであり、個人の力など何物でもない。人間関係は大切だが、失うことがあってもすぐにまたリカバリーできる。自分が自分である限り、また次のステージの幕は上がります。 |
📖 「文學界」2015年6月号