「明け方の家」 秋吉敦貴
| アパートというよりもシェアハウス、いやそんな流行りのどこかカッコよさを漂わせるものよりも賄い付き下宿という言葉がぴったりの富士子さんの家。 酒屋を改築した一軒家に、大家の富士子さん、英語教師のルーさんとともに暮らす「私」。 野良猫の手術に手取り月給よりも高い15万円を払い、そのことから富士子さんの家に同居するようになった過程と理由がすさまじい。同居小説ならではの、血の繋がりのない奇縁を読ませます。 料理上手の大家さんは不干渉で、ややぶっきらぼう。ルーさんもどことなく不気味。 しかし、この人間関係が「私」にとっては居心地よく感じられるのが伝わってきます。 孤独感を表現しているのに、「年上の女の人が優しいということを、私は長い間すっかり忘れていた」など安心感を絶妙に織り交ぜて語る言葉の数々が心に響きます。 「おこりんぼ」「がさつばばあ」とやりあう富士子さんとルーさんの喧嘩もいい。 最後までサプライズを用意し、静かに着地させたのもうまい。読み終わるとタイトルが心に沁みます。女ならではの感覚に満ちた小説。 |