「夜の斧」 小笠原瀧
今回、文學界新人賞は大賞と佳作2点が入りましたが、この佳作がいちばんおもしろく読めました。 リサイクルショップに失敗した父親が、懲りずにガラクタを拾ってきて、それが家の中で増え続けています。息子の光太郎は少年院にも入った不良で、その後、定時制高校中退、アルバイトを転々としながら窮して実家に転がり込んできています。その兄の京太は苦々しく思い、ぶつかりあう毎日。 それぞれがそれぞれに頑張っているのですが、その努力は空回りし、家族には全く理解されません。一緒に暮らしていても心が離れている様を執拗に描いていきます。 そこに出てくるガジェットがサビのついた思い出を引き出し、リアル感があります。 「生きる」ことに対して真剣に親子喧嘩を始めるのは、どうかと思います。変に理屈がとおっているのが、それまでそれぞれが訳の分からないことを言っていたのと相反し、ちょっと戸惑いました。 しかし、このわかりあえない家族の物語は、次の何かを生み出しそうです。 |
