「消えた脳病変」 浅ノ宮遼
脳外科の臨床講義で、教授から出題される、ある臨床例がミステリーとなっています。外来で昏睡状態となった女性の病原を、学生たちが議論しながら解決します。 しかし解答には、医療的専門知識はあまり必要ないと提示されるので、読者も謎に挑みやすくなります。 患者の既往症は難治性てんかん。その病歴や家族との関係などから、一人の若い女性の物語も展開していきます。 教室内での学生間の議論もわかりやすく、興味深く読みました。医師が症状から病原を探るには、知識を総動員してかかっているのがわかり、ますますおもしろくなっていきます。なかなか正解にたどりつかない学生らに発破をかけるのもいい。 ミステリーの解決は二段オチとなっているのですが、ひとつはやや読者に不利ですね。この伏線がひとつ、欲しいところでした。 医者の資格、素質を学生に考えさせるラストに繋げる展開もきれいに決まっています。こんな教授に教えられた学生はいい医者になるのではないでしょうか。 |
📖 「ミステリーズ!」 vol.67