「死にたくなったら電話して」 李 龍徳
三浪中の徳山久志は、キャバクラ嬢の初美から気に入られ、彼女の世界にどんどん引き込まれていきます。 初美の造形が見事にハマっています。とびぬけて美人で、コミュニケーション能力も優れているのに、その裏側では常に死ぬことに興味が尽きないという。 彼女の豪華なマンションで、その偏った読書履歴を元に虐殺、人間性の否定、拷問などの話題と展開が秀逸。徳山とともに、圧倒的な言葉の数々に飲み込まれ、生活感のない部屋で、生きる意味を見いだせなくなっていきます。 そもそも徳山もいつでも死にたいと思っていました。 徳山の狭い交友関係をたどるのもいい。ネットワークビジネスに友だちを引き込もうとする、どうしようもない友だちや、俺様なバイトの先輩や、パワハラに消耗している先輩しかいないのは、徳山もまたその部類だからでしょう。 それをどんどん思うままに切っていくのが、清々しい。 初美とともに、おそらくこのまま餓死していく徳山ですが、この著者には根本のところで「生への礼賛」を感じます。すごくいい人なんじゃないか。 だから読んでいて、陰鬱な気分にはならない。静かな気持ちで、死んでも生きても同じことと達観できてしまう。光の明るさを感じます。 |
