『気障でけっこうです』 小嶋陽太郎
物語世界設定のオリジナリティがいい。 小さな公園で首まで埋まった男がいます。このシュールさとリアル感が全くない冒頭なのですが、なぜかボイルドエッグズ新人賞では許してしまいます。 女子高校生のきよ子は男を助けようと、大きなシャベルを担いで走り、交通事故にあいます。 意識不明の状態から目覚めてみると、男は幽霊となってきよ子の前に現れます。 この幽霊のルールが、著者オリジナルのもので、幽霊は生きている人や物に触れたりしますが、人は幽霊や幽霊の物に触れません。 幽霊が持っているものは、他の人にも見えるので物が浮いているように見えます。 幽霊の登場も幽霊次第。この設定がうまく機能しています。 リアル感がないのに、男が埋まっていた理由がわかると俄然、恐ろしい展開に発展していきます。 超マイペースのキエちゃんの存在も言葉も活きていますし、幽霊が自ら復讐を遂げるのもいい。ただ、最後の決着場面はやや緩い。緊迫感があまり感じられませんでした。 文章力もストーリーテリング力も今ひとつです。 著者は大学生で、ボイルドエッグズ新人賞では最年少の受賞となりました。意外な感じです。ボイルドエッグズ新人賞は若い書き手の新人賞として、もっと人気がでてもおかしくありません。 |