『渦巻く回廊の鎮魂曲 霊媒探偵アーネスト』 風森章羽
数か国(日本語含む)ペラペラの外国人霊媒師 アーネスト・G・アルグライト。 叔父の喫茶店「リーベル」を引き継いだ竜堂佐貴。 ずうずうしいが憎めない探偵の鳥出。 と、キャラクターがたち、ミステリーの仕掛けも王道です。 霊媒師の噂を聞き、リーベルを訪れた医学生の月都から 自宅の屋敷で16年前に姿を消したミリを探してほしいと アーネストと竜堂は依頼を受けます。 屋敷では折しも内々の紫陽花をめでる会が開催されています。 この屋敷は、画家だった祖父が作った奇妙な館で 絵を飾るための建物に、渦を巻くように部屋をめぐらしています。 さらにこの突き当りには、有名な人形師のつくった 精巧なビスクドールが飾られていて、 ミステリアスな雰囲気を作ります。 回廊状態となった部屋で殺人事件が起こります。 折しも雨によって山道が閉ざされ 屋敷自体がクローズドサークルになっています。 月都の姉の水里(みさと)は心と身体を壊し 周囲に反応することもできず 彼女の世話をするのは、住込みのお手伝いさんの姪・明日夏。 祖父の代から画家志望の若者が出入りするのに慣れていて 屋敷にはこの時もアーティストが二人、滞在中。 月都の父は、轢き逃げ事件の嫌疑をかけられたまま死亡。 これらの伏線を回収しながら、ミステリーを解いていきますが 探偵役が二人登場します。一人は私立探偵の鳥出。 もう一人が霊媒師アーネスト。 鳥出がずうずうしく、明らかに変なのですが 物語が進むにつれ、憎めなく、いいヤツに変わっていくのがいい。 一方、霊媒師としての能力でアーネストは謎を解きますが この能力がミステリーのおもしろさを半減させてしまっています。 鳥出のようにロジカルに説くのが やはりミステリーの王道なのでしょう。 評価が分かれるミステリーといえます。 |