「サーチライトと誘蛾灯」 櫻田智也
冒頭からユーモア感覚を漂わせ、静かな期待感が高まりました。これはどこかで読んだことがある――と記憶を探れば、泡坂妻夫のとぼけた味わいに似ています。 ホームレスを排除した公園の見回りをする吉森老人に、公園でカブトムシを捕まえようとするいい大人のえり(魚偏に入る)沢。えり沢はもちろん、生真面目な吉森にしても、ユーモラス。 公園で張り込み中に殺された私立探偵・泊の殺人事件のフーダニットは、ミステリー要素がやや弱いですが 最後のセリフと一行が効いています。 結局、登場人物みんなが、人生の困難を思いやりとユーモアで乗り切れる要素を持っているにも関わらず、図らずも、巡りあわせによって不幸を招いてしまう。 人生の縮図を短編ミステリーに盛り込み、印象深い受賞作となりました。 |
📖 「ミステリーズ!」 vol.61