「息子の逸楽」 守島邦明
大学在学中から母の介護を始めた洋は卒業後も就職はせず、 経済的に母に依存しながら介護を続けています。 母親もまた息子がいないと日常生活が送れません。 息子以外の他者に触られることを拒否し 排泄を手伝ってもらい、同じベッドで眠ります。 彼らは手を繋いで、大阪の街に出かけます。 デパート、ホテルのレストラン、老舗の洋菓子店。 猥雑な大阪は見ないで、裕福な彼らは 優雅な時間が過ごせる場所を選びます。 しかし、その本質は肉体の接触から生れる 嫌悪感と痺れを呼び起こす、生々しい感触です。 後半、やや純文学に囚われてしまったかのように 退屈な展開になってしまいました。 今はもうない眼鏡屋に、悪化した洋の目。 肥大する右手の役割。 元々共依存だった母と息子は、息子の依存度が高まっていき それにつれ、母はしっかりする時間が増えます。 反転し、まともになろうとする洋と、息子の手を繋ぎとめる母。 共依存の二人が織りなす日常は、何かを侵食し続けます。 |