「アフリカ鯰」 前田隆壱
語り手の異常なまでの親友・岡への依存と信頼が 新鮮な感覚を呼び起こしました。 女性が主人公ならこれくらいの依存度の高さは 多くの小説で扱われてきましたが 男性でもここまでべったりできるのかと驚きました。 コインの裏表で人生を決め、それがことごとく当たってきた 語り手と岡がアフリカに家を購入したことから 運命のハズレをどんどん引いていくのがおもしろい。 聾唖の娘、黒犬が印象深く使われ、アフリカの雨季、 自然の厳しさ、生きる厳しさをも内包します。 ただし類型的なアフリカではなく、もっと退廃的で 全く受け入れてもらえない、別世界としてアフリカです。 しかしプロローグの意味がとりにくく、最後まで読んでから 再読しましたが、必要だったのかどうか疑問に思いました。 生真面目で、なんでもそつなくこなす実用的な語り手に対し 直感力が優れ、根っからの楽天家の岡。 二人の関係が壊れていくのを丁寧に描写していきます。 新人賞受賞作でここまで書ける人は珍しい。 これからどんな作品世界を読ませてくれるのか、楽しみです。 |