『ジェリー・フィッシュ』 雛倉さりえ
| 女子高校生同士の恋愛、親の暴力によって歪む子ども、 閉ざされた世界を愛する男子高校生、 姉と彼女によって女への感情を決定される男子など センセーショナルで繊細な高校生の心の動きを 巧みな描写力で立ち上がらせる連作短編集。 夕紀と叶子、女子高校生の恋愛を描く「ジェリー・フィッシュ」。 叶子のゆがんだ性愛を描く「果肉と傷痕」。 眞子と朝日先輩の恋愛を描く「夜の国」。 裕輔が姉・翡翠と叶子を通して女に抱く感情を描く「エフェメラ」。 栞と夕紀の逃避行「崩れる春」。 これら5つの短編はそれぞれに相関しあいます。 そのリンクも楽しみました。 しかし辛口の物語です。 「夜の国」は普通の高校生の恋愛と思っていると 思わぬ伏兵のように物語が歪みます。 水族館のクラゲ、植物園の壊れた温室、 ひそやかに脱走するへび、図書館のおばけ伝説など 陳腐になりがちなモチーフを美しく、冷静に描きます。 独自の世界を持ち、自らの言葉で描きたいという意欲があるのに、 それをあからさまにしない冷静さを感じました。 登場人物のキャラクターも他者との関係性もよく考えられています。 誰もが自分のテリトリーには入り込ませない頑なさを持ち それによって自分も他者も傷つけ、しかしそれ以外に 生き方を知らない10代を描き出しています。 最終選考で落ちたにもかかわらず 映画関係者の目に留まり、単行本化・映画化されました。 もともと映像化の多い新人賞なので このようなデビューも生れるのでしょう。 また本作は、著者が16才の時に描いた小説というのにも驚きました。 この才能は今後、どこへ伸びていくか、楽しみです。 |
