「裏庭の穴」 田山朔美
幼い頃、母親が月夜の晩、裏庭になにかを埋めていた記憶を持つ主婦・朝子。夫は浮気をし、高校生の娘は自分勝手。 朝子はミニブタを飼いたいという娘の願いを叶えるべく、ネットで注文をします。 しかし送られてきたのは曰くありげな豚。 「裏庭」と「豚」という伏線があからさまで、ストーリー展開が読めてしまい、つまらない。 主婦の鬱屈した生活や、家族にもそっぽを向かれ続けるやるせなさ、娘の学校や近所の人たちとの煩わしい付き合いなど、うまく主婦像を描けています。 特に夫の会社の同僚と名乗るエキセントリックな女も、その夫の浮気相手なのだろうと読者にきちんと想像させます。さらに、娘の学校のPTAで一緒の岡田による、下着販売会への執拗な誘いもきちんと読者に結末を想像させ、その通りにしています。 この「きちんと想像させる」筆力は認めますが、今までさまざまな小説に描かれていた人物をなぞっているに過ぎません。 この小説に登場する人物に、新鮮さやハッとする人間性などは感じられませんでした。 ストーリー、人物造形、豚に託す女の心情など、小説を「きちんと」書けてはいますが、枠のなかに「きちんと」収まっているだけです。 |

田山朔美


