「おしかくさま」 谷川直子
「おしかくさま」というインターネット上の神様と それにまつわるディテールがおもしろい。 宗教が「欲を捨てよ」と説くなか、 「お金の神さま」のおしかくさまは即物的に 宝くじやギャンブルを当てさせます。 お参りする場所はATM。 しかも縁起のいいATMが告げられ 信者は必死にお参りに向かう。 おしかくさまを信仰する、初老のおばさんたち4人に いんちきを諭そうとする元教師。 元教師の娘ミナミが父の後をつけ、その宗教にハマっていきます。 娘はうつ病で引きこもり。 その妹アサミは姉の面倒を見ています。 妹の娘の中一のユウもまた学校でおしかくさまが話題になり 「おしかくさん」というこっくりさんもどきに触れていく。 徐々に周囲を巻き込んでいくおしかくさんを とても楽しく読みました。 リーダビリティがうまく、精神的に成長しない娘二人に 人に教えるのが根っから好きな父親とそれを容認する母親と 登場する人が等身大の幼稚さ。 おしかくさまにハマっているおばさんさちも それぞれ事情は違っても寂しい老後を迎え 頼れるのはお金だけと思いこんでいます。 最後に神様が登場してからは、やや失速しますが 神様が彼女たちに一番見たくないものを見せるというのがいい。 ここで精神的自立にさらに気づかず、 やはり表面的な、家族の姿にとらわれてしまう彼女たち。 どこまでいっても救われない。 おしかくさまのような薄っぺらな神様は まだこれからも出現しそうと予感させます。 |
