「田舎の刑事の趣味とお仕事」 滝田務雄
ストレートなタイトルは「ダサい」と思いましたが、そのままのストーリーであり、雰囲気もとぼけた感じで、なるほど読者を滝田務雄ワールドに誘いこむ仕掛けと気づかされます。でもやっぱりダサいかな。 黒川鈴木刑事(こういう珍名だそうだ)は巡査部長と部下白石高作の密かな攻防が読みどころになっています。白石は、仕事はできないくせに口だけは一人前の生意気な部下という設定。それにイラつきながら、黒川はビシッと事件解決。 さて、この黒川の趣味がオンラインゲームというもうひとつの設定で、二人の関係をさらにおもしろくしています。 しかも白石は偉そうに上司である自分の悪口を言うし、盗難事件のことまでしゃべりそうなお調子者ぶりだし、自らのミスでゲームを壊し、メンバーの顰蹙を買います。とことん著者は部下を貶め、読者の共感をあおります。 ストーリーの核は、ワサビ盗難事件というこれもまたとぼけています。さくらんぼやメロンといった高級農作物の盗難事件は裏販売ルートの壊滅で消滅しましたが、今度はワサビ盗難事件が勃発。 ミステリーはワサビ盗難事件と、ゲームの謎解きと二重構造を描きますが、今ひとつ盛り上がりには欠けます。 脇役ですが気になったところがひとつあります。黒川の妻のセリフがまるで50年前のような硬い言い回し。他のキャラクターではそんなことはないので、わざとだと思うのですが、その意図がわかりません。彼女は黒川に「無関心」なようなので、もっと別のセリフのほうが効果的でした。 ただ黒川と白石の攻防では、読者を楽しませようという著者の意欲は伝わってきます。 |
「ミステリーズ!」 Vol.19
滝田務雄

