私小説といってもいいでしょう。主人公がやっているマリファナは作り事でしょうけど。ラップ調の一人称で語ります。 主人公の「俺」は29歳。祖父と父は他界し、母が父の会社を継ぎ、一人息子の俺はその会社はすでに辞めていました。今は、事故で動けなくなった祖母を自宅介護しています。 祖母を哀れむだけで全く介護しようとしない親戚。祖母にくだらないテレビ番組を見せ、介護をサボろうとするヘルパー。介護はイラつくことばかり。そして介護することによって、自身の疲労が蓄積していきます。 それでも救いはあります。祖母ときちんと向き合ってくれる優秀なヘルパーの存在。昼間は小さな会社を切り盛りし、夜は息子といっしょに、介護をする母。時にはムカツくけれど、昔、ミス奈良になったこともある美しく、かわいらしい祖母。 この金髪の若者の頑張りが頼もしい。 また、下半身不随になる前、昏睡状態の祖母を、幼い頃、養子に行った弟と呼び戻すシーンは涙モノ。 リズムに乗って、気持ちよく小説世界にトリップしました。 |
書評 文學界新人賞「介護入門」
第98回(2004年)文學界新人賞「介護入門」 モブ・ノリオ