ジメジメしていない鬱病患者の話。自分の病気を突き放す。諦めるというのもちょっと違う。それはそこにある、という感じ。抱きしめて、自分を慈しんで生きていこうなどと、よい子ちゃんの態度はない。 その病気のせいなのか、簡単に男友達と寝てしまい、そのあとはそれっきりで男からの連絡は途切れ、そうして友達を一人ずつなくしていく。 病気のせいで会社を辞め、入院中に書き始めた絵画で賞を取ったが、やっぱり食べていくのは難しい。一生、このままの収入だろうな、と思っている。 けれど決して暗くない。元ヒモで自殺未遂のいとこのめんどうもみたりする。 文章にも雰囲気があり、スムーズな流れがさらに病気を軽くみせる。すごい新人だ。 著者本人も鬱病。自分の投影があるかもしれないが、これだけ突き放したものが書けることがすごい。しかもデビュー作。これからが楽しみな作家。 |
書評 文學界新人賞「イッツ・オンリー・トーク」
第96回(2003年)文學界新人賞受賞作「イッツ・オンリー・トーク」 絲山秋子