またたくさんの小説の書き方を知っていれば、新たな小説のアイディアも沸いてきます。
オススメ度 ★★★★★
『脳が読みたくなるストーリーの書き方』姉妹編。
読者がのめりこむ物語を書くために、物語の外面的な闘いだけではなく、主人公の内面的な闘いも重視して、両面から物語を作り上げる指南書です。この両輪が読者の脳を刺激し、物語に参加者として活動しているように感じさせることは、磁気共鳴機能画像法(fMRI)でも解明されているそうです。
実際、新人賞応募作は思いついたアイデアだけで、練りも何もなく、ただ書いているだけのものが大半を占めます。そのようにして書かれたものは薄っぺらく、退屈で、著者だけはおもしろいと思っているだろうな、とわかってしまいます。もっと深みのある作品を応募しないと受賞できません。
「おもしろい」作品を書くために、そのアイデアをどのように物語にしていくかを教えてくれるのが本書です。「なぜ?」「もしも」など深く考えるきっかけを提示しているので、それにしたがって主人公やプロット、物語の世界観について構築していきます。特に物語の終わりにおける「そうか!」を最初に書いておくことの重要性などはユニーク。またストーリーの重層化についても教えてくれます。
最初は大変でしょうけれど、慣れれば、思考の習慣ができるでしょう。脳は訓練すれば成長します。読者の世界観が変わるような小説を紡ぎたい人のための参考書です。
著者は芥川賞作家で、多くの小説講座の講師を務めます。長く品切れでしたが、受講生の村田沙耶香が第155回芥川賞を受賞し、その受賞インタビューで本書に言及したため、増補出版されました。
小説を何作か書いているが、新人賞に応募しても落選してしまう人向きの小説指南書です。
「書き方」よりも「作り方」に重点を置き、思いつきをそのまま書くのではなく、どのような作り込みをするか、シーン、設定、展開、新局面、人物造形、物語、描写と情報、会話、文体、読者との距離などについて丁寧に説明しています。
設定と人物造形と展開といった多岐にわたる小説の作り込みの、有機的な繋がりも書かれています。これは他の指南書では見られない視点です。純文学、エンターテインメント、どちらのジャンルでも使えます。
底が浅く、著者が自分の想いを書いただけで、何の感動も読者に与えていない。そんな創作から脱出するのに本書はとても役に立ちます。
脳科学の観点からの小説指南を示唆するタイトルですが、それはほんの少しで、読者視点で小説を書くことに重点をおいています。
初心者が陥りがちな、書いている本人だけがおもしろく、読者は置いてきぼり……というストーリー展開やテーマ、葛藤などの解説はぜひ読んでほしい。
事例に映画が含まれるのが難点ですが、読者を引き込むポイントは抑えています。魅力的なプロット、現実的なテーマ、感情、主人公の試練や内面の掘り起し、ゴール、感覚的な詳細描写、原因と結果の物語展開、伏線、サブブロット、改稿など、解説項目は多岐にわたります。各項目のチェックポイントで、客観的に自分の小説を読む訓練ができるようになっています。
純文学にもエンターテインメントにも使える小説技巧についての指南書。20年ぶりに増補され、復刊されました。
奥泉光との対談では、夏目漱石がいかに小説テクニックを駆使しているかを紹介。
書き出し、人物造形法、衝突、場面転換、時間、伏線、罹れない言葉、比喩書かれざる言葉、反復的細部、比喩、読者との共謀技術、<叙述/虚構>の二重螺旋構造などの小説のテクニックは、中上級者向けに詳細な解説をしています。漱石の作品を好例とし、既存の作品(おおむね好意的に受け入れられている作品)を悪例として俎上に挙げ、欠点を指摘しています。細かな指摘ですが、細部に小説の神様は宿ります。
秀逸なのは「焦点化の離れ業」。話者と人物の距離について解説しています。このことは小説にとってとても大切なのに、解説した小説指南書はないと思われます。ぜひ勉強してほしい項目です。
ホラー、ミステリー、SFとさまざまなジャンルを書いてきた著者によるエンターテインメントの指南書。小説作法、執筆ノウハウをコラム形式で、読みやすく紹介。長編小説を書くヒントも散りばめられています。
軽く読めるのですが、内容は濃い。アイデア、プロット、キャラクター、文章作業、技巧、推敲などについてポイントを押さえ、登場人物の名前の付け方、どんでん返しは新人にはハードルが高いなど、他の指南書では見落とされている大切な部分について触れられています。
うまく書けないのは、その小説世界をまだ構築できてない証拠、エンターテインメント作は自己満足ではいけないなど、エンタメ作品に求められる要素をリアルな声で書いています。
2冊目、3冊目のエンタメ小説指南書として揃えておきたい。
ストラクチャ=構成とは、「表現上の諸要素を独自手法で
組み立てて作品にすること」と定義していますが
実際は「小説を構成する要素をどう書くか」といっていいでしょう。
オープニングから25%地点で転機をつくる、
最初の25%で登場人物全員を出す、
ストーリーの中心に大きなポイントを置く、
第2幕の後半は伏線を張る最後のチャンスなど
小説全体論にも触れますが、個別の要素の勉強になります。
掴み、始め方、最初の章の注意点、登場人物紹介、
危機と舞台設定とその説明、プロットポイント、ピンチポイント、
サブプロット、人物の変化、クライマックス、解決、
エンディングなどの要素をロジカルに語ります。
特にエンディングで心に響かせる要素、後半のシーンのつくり方、
シーン(出来事や行動を描く部分)とシークエル(人物の反応を
描く部分)のバランス、文の構成は、日本の小説指南書では
ここまで語られることはないので、ぜひ参考にしてほしい。
前作『アウトラインで書く小説再入門』を読んでいなくても
全く問題ありません。
小説推理新人賞受賞作家の誉田龍一、
元「小説新潮」編集者、『スーパー編集長のシステム小説術』の
校條剛監修による、初級者向けの小説指南書です。
テーマ&構想、ストーリー作成、描写、推敲などの
基本的な創作技術について、実例を挙げて、わかりやすく解説。
小説の書き方を一から教えてくれます。
新人賞の選び方、新人賞で求められる作品、
応募前に知っておきたいこと、原稿送付の注意など
新人賞応募に関する事項もあり、親切です。
角田光代、辻村深月、誉田哲也の「私の小説の書き方」もあり
勉強になるでしょう。
初めて小説を書く人にはおススメです。
小説はどのように書いてもよい、という持論から、小説作法を書かないと公言してきた筒井康隆。本書はその掟を破り、プロになっている人向けの高度な技術――揺蕩、破綻、省略、遅延、実験、異化、逸脱、羅列など――について語ります。
古今東西の小説の例を引き、自作創作の秘話を披露しながら、文章術を解説します。さすがに筒井康隆です。おもしろくて読み応えがあります。
小説を書くためにいちばん大切なものは妄想ではないか、と書いています。着想として降りてくるもの、創造力、想像力の根底となるものは、確かに必要不可欠です。
さらに、作品には凄味、色気、迫力、品格(作者ではない)が備わっていなければならない。
これは新人にいちばん求められるものでしょう。
新人賞を目指す人にも大いに参考になる小説技巧書です。
『小説作法』を新たに翻訳し文庫化。
5つのパートから成ります。
回想録ではキングの半生、著作について。
小説の道具箱では文章、表現のスキル、語彙などについて。
魔法の杖としての「書くことについて」が
本書の核となります。プロット、会話、推敲、文体、描写から
出版エージェントへの手紙の書き方まで
細かな小説作法が述べられ、キングの執筆姿勢が見られます。
キングの手法がすべての書き手に通用するとは限りませんが
「たくさん読み、たくさん書くこと」という言葉には
励まされるでしょう。
そして「生きることについて」では1999年の瀕死の重傷を負った
事故以降、彼が感じてきた「書くこと」と「生きること」。
作家の思いがひしひしと感じられます。
「ホテル・ストーリー」の第1稿と推敲後の第2稿が
そのまま掲載され、本当の推敲とはどんなものかがわかります。
巻末には『小説作法』でのブックリストと、01~09年まで
キングの読んだベスト80冊リストが掲載されています。
彼が「ハリー・ポッター」シリーズを絶賛しているのも興味深い。
物語の設定、展開など(=アウトライン)を
決定してから小説を書く方法です。
初めから物語展開を決めてしまったら
小説がおもしろくなくなるのでは、と疑問を持ちましたが
ストーリー、プロット、キャラクター、舞台設定を練る
最高の方法であることがわかります。
著者のアウトライン創作方法は、とても細かい。
一文でプロットとテーマを伝える「プレミス」を決める、
発想を広げる「もしも」をとことん考える、
おもしろい人物とともにおもしろい動機が必要、
主人公の敵対者、敵対物のリストを作れ、
人物インタビューを行うなど、独自の方法が目白押し。
それぞれのアウトラインのポイントや注意点も詳細ですし
効果的に次のページへ駆り立てるシーンや区切りなど
細部にも気を抜きません。
一つの小説のアウトラインに数か月から数年かかることもまれ
というアウトライン派の作家のインタビューもあり
ひとつのアウトライン創作方法にしばられることはないと
教えてくれます。
平板な、ありきたりの物語になってしまったり
ひねりのない登場人物や人間関係になってしまう作家志望者、
途中でぐたぐだになってしまい最後まで書き切れない人、
計画を立てて実行するのが得意な人にはおススメの指南書。
初めて小説を書く人、小説のジャンルを広げたい人向け。
着想、プロット、文体、人称、ストーリー、
キャラクターの作り方といった小説の基礎知識が学べます。
さらに深く学ぶには、他の指南書が必要ですが
初めて小説を書くのなら手がかりとなるでしょう。
新人賞に応募する際の原稿チェックから投函までの作業、
各新人賞の傾向と対策もあり、親切な内容です。
本書の大きな特徴は、ジャンル別の書き方分析が細かいこと。
恋愛、ミステリー、ヒューマン、時代・歴史、SF&ホラー、
ファンタジーのジャンル別のポイントや書き方を
最近の人気作品25作を例にとりながら解説します。
自分が書こうとしているジャンルはもちろん、
今まで思いもしなかったジャンルへの挑戦にも繋がります。
また村上春樹の小説の書き方についてもコラムで紹介。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
「野性時代」で1年間連載した小説講座。
丁寧で緻密に小説の書き方を指南。しかも、おもしろい。
連載時から他社の編集者の間でも話題になっていたのがわかります。
例えば「トゲが必要」とは、ひねり、主人公を残酷な目に合わせる、
読者におもしろいと思ってもらうなど、多角的に語ります。
一人称の書き方、キャラクター、会話、プロット、文章、描写など
小説に必要な基本と応用がぎっしりつまっています。
重要なところは赤を使っていて、頭に入りやすい。
全編で繰り返されるのは「一生作家でいること、そのための技術」。
そのための新人賞選びは大切、編集者とのつきあい方など。
また12名の受講者のレベルが一般的で
誰もがやってしまう失敗や間違いを犯し、とても参考になります。
ここで学んで3作書いて新人賞に応募してダメなら諦めた方がいい
と明確に言い切ります。
フリーの編集者であり、新人賞の下読みを5000編以上、
池袋コミュニティカレッジで小説創作の講座、
公募ガイド社の作品添削の通信講座を受け持ってきた
後木砂男による小説指南書。
物語づくり、登場人物設計、会話、描写、文体と章立てされていますが
内容はさらに細かい。それぞれのダメな例と理由をあげ、
文章のポイントをしぼって、わかりやすく解説しています。
ほかの指南書では見られない指摘も多々あり、
新人賞を目指す人にはぜひ読んでほしい1冊。
『小説道場』
『作家とは何か』では、作家の条件、その生活と人生、
読者や出版社、編集者との関係など作家の周囲のことにも言及し
作家を目指すのなら一読の価値あり。
作家生活40数年の蓄積はさすがとしかいいようがありません。
新人賞に求めるものなど、応募する人が心得るべき点を加筆しています。
『小説の書き方』では、実作サンプルを加筆。
より具体的な創作論となっているので
『小説道場』は☆4つでしたが、本書は☆5つにしました。
文章論、文体、構成、プロット、アイディア、描写、
書き出しと結末、テンポなど小説の基本作法を
多岐にわたって紹介し、解説しています。
「『事実は小説より奇なり』というが
本当にそうなら小説など読まれない、
事実を凌駕するから小説は読まれる」
という著者の言葉は創作に対する矜持がうかがえます。
元「小説新潮」編集長であり、元朝日カルチャーセンター新宿教室の
「エンターテインメント小説を書きたい!」の講師による小説指南書。
ほかの小説指南書や既存の小説などをパターンで分析し
抽出して紹介しています。
小説の書き方、ストーリー展開、資料収集、タイトル、
新人賞の選び方など、広く浅く網羅しています。
この1冊だけで小説を書くことはできますが
新人賞をとるには、本書に書かれたこと+αが必要。
小説初心者向きの内容です。
編集者・ライターなどマスコミ希望者に実力をつけさせ
出版業界に導いてきた編集の学校・文章の学校。
その講師による短期集中講座です。
文章を書く、推敲する、プロットを立てる、
小説にするといった初歩をわかりやすく解説しています。
サスペンス、視点、名前、場の感覚、リスト、
人物紹介、テクストのなかの読者、凝った文章、
描写と語り、電話、アイロニー、物語構造など
50の技巧について例示しながら解説しています。
短い文章ながら的確にポイントをまとめていますし
このエッセンスを日本の小説でとりいれるには?
といった視点で読むと新しい小説が生まれるのでは。
●作家になるための参考書●













