「オーブランの少女」 深緑野分(ふかみどり のわき)
美しく咲く花の園オ―ブランで陰惨な事件が起きます。 それを目撃した娘の父親によって 作中作として、オ―ブランの秘密が語られます。 短編のミステリーでの大きなチャレンジとなる 大きな物語です。 作中作では、花園に閉じ込められた病身の少女たちが 花の名前をつけられて、暮らしています。 オ―ブランと呼ばれる庭園には規律と、 それを厳しく守らせるマダムと教師たちがいて 目を光らせています。 語り手は、突然、厳しい生活の中に放り込まれた 一人の少女マルグリット。 オ―ブランで親友もできますが なにか怖いことが起こる予感があり それが的中していきます。 しかし、「何が」起きているかはわからない。 謎めいた庭園の奥に深く足を踏み入れていきます。 ストーリーテリング力はあるのですが ややご都合主義的な展開もみられます。 ただし、帰着のどんでん返しはおもしろい。 両親に捨てられたと思いこんでいたマルグリットが救われ すべてを内包する庭園の深みに、暗い影を残したのも この物語に奥行きを感じます。 これが大賞受賞でもいいくらいの筆力ですが ミステリーという点で弱い。 でも次作を期待したい新人作家です。 |
📖 「ミステリーズ!」vol.44