「商人の空誓文」 明神しじま
男が少女からりんごを買うところから始まる この物語は、異国の寓話を読む楽しみに満ちています。 男から物語を買う青年。 自分の影を身代わりにたてたため、身の破滅を招く男。 国力を強くする秘策を国王に授ける商人。 ひとつひとつの挿話は惹かれるのですが それを表現する文章力が著者にまだ備わっていません。 セリフが誰のものなのかわからなくなり 物語が飛び進行を見失う。 そんなことがたびたびあります。 重層的な物語を構築したかったのでしょうけれど そこまでの技量が追いついていません。 独特の雰囲気をかもしだしているだけに残念です。 ただ、著者は冷静にこの物語を書いています。 小説に酔っていない分、まだ成長の余地があると 判断されての佳作受賞でしょう。 |
