「偶然の息子」 上月文青(こうづき ふみお)
| 「障害のある息子の性」という重い命題に取り組んだ意欲作。 息子が生まれてから15歳までを とても繊細に、しかしそうとは感じさせない筆致で描きます。 少しずつ、この語り手である母親の苦労や 人生の選択、重荷を的確に読者に届け、 さらに自分の「女としての性」もしっかりと描いていきます。 だからこそ、恋人が結婚はできないけれど 息子の性問題を共に背負ってくれたり 息子の担任教師が真正直で、まともにぶつかってくれる―― お手軽なお涙ちょうだいになりそうな展開に、 逆にホッとするのです。 文章がとてもうまい。 擬音語擬態語を多用しても、やぼったくならず、 独特の世界をつくりあげます。 大賞作品よりもずっと惹かれるのに 読者賞にとどまってしまったのが惜しい。 次の作品が楽しみな新人作家です。 |