「べしみ」 田中兆子
| 性器に人面瘡が出来る設定では 姫野カオルコの『受難』 選考委員3人のうち2人が この作品を読んでいないのが幸運でした。 本作の人面瘡は能面の鬼「べしみ」に似ていて 彼女の性欲を高め、苦しめます。 話を人面瘡ができた「やっかいごと」から 「性欲」にシフトさせたのが新鮮です。 「女性の性欲」とテーマを銘打ってしまうと この作品のおもしろさは通じません。 40になるまで男性経験が乏しく 恋愛に臆病だった女性だからこその悩みがベースにあり その上で新しい経験に戸惑くエピソードが的確です。 特に性欲を延々と描写し、一人で持て余し 困り果てつつも、どこか自分に酔っているのが女性らしい性欲です。 ただし、文章や小説へのアプローチがやや雑です。 「彼女」が「私」に変化したり、 視点が突然、自販機のところで倒れている男性になったりします。 またタクシー運転手がなぜ彼女を相手にしたのかわからないまま、 その後、「春!」に突然変化します。 あまりにもとってつけたかのようで それまでの苦悶はなんだったのだろうと。 小説の帰結は難しいのですが このテーマはさらに難しいでしょう。 けれど、このラストはないなあ、と感じられました。 |
