「ゴルディータは食べて、寝て、働くだけ」 吉井磨弥
スペイン語で「太っちょ」の意味を持つ「ゴルディータ」。 主人公の理子は、ぽちゃぼちゃ体型専門のデリヘル嬢です。 いい線までいっていたバンドが解散したことをきっかけに 過食がエスカレートしていきます。 テイクアウトのレシートを提示し 「おいしい」といったセリフや食べものの描写を挟まず 休みなく、一気に食べていきます。 それがものすごい。 その結果、身長158cm体重58kgだった理子は 結局138kgまで大きくなっていきます。 それ以降は測定不能。 自分ひとりでは立ち上がれないほどに肥大してもなお 食べることをやめません。 というか、たったひとり残った顧客が 彼女が食べているところと排泄しているところを見たい という注文の客……。 自ら不条理な人生へと転落しながらも 決して暗くなりません。 近未来の世界が舞台ですが すべてがなくなるカメレオンゲートという不気味な現象をも 気にせず、とにかく生きています。 開き直っているわけでもなく、淡々と食べています。 どこか清潔感のある爽快な小説に仕上がっているのは 理子の持つ「善人」としての部分があるからでしょう。 (これは著者からにじみでたものかもしれません) 常識を持っているのに、「食」に関しては持てない。 アンバランスな人格を、しかし、誰も責められません。 ガジェットを小道具としてしか扱えないのが気になりますが その工夫は頑張っています。 |
