「自由高さH」 穂田川洋山
下町の業平橋に古い工場跡を借りた若い須永英朗が 友人たちの助けを借りながら掃除し、改装していきます。 多くの情報を入れ、その工場の来歴や 出入りする人々の細部を書いていきます。 専門用語も説明が適度に省かれているのがいい。 また下町を舞台にしながら、それを全面に押し出さないのもいい。 そして人と知り合いながら、知り合いに留まるであろう 工場の持ち主の中曾根高大と須永英朗の関係、 それは須永とほかの登場人物たちとも同じ距離感で描きます。 適度な距離は適度な理解に留まり、 しかもいいように解釈される人間関係をうまく浮かび上がらせます。 文章も練られ、破綻がありません。 受賞作が二作でる場合、凡作でどちらかを選べなかったという 消極的な理由が多いのですが 今回の文學界新人賞は、期待したい新人作家ふたり、 という珍しい受賞になりました。 |


穂田川洋山



