2009年12月29日

書評 第9回ボイルドエッグズ新人賞『お稲荷さんが通る』

第9回(2009年)ボイルドエッグズ新人賞受賞作
『お稲荷さんが通る』 叶泉

約100年後の京都を舞台にしているのですが
日本ではなく、中間人民共和国日本省特別行政自治区。
傑作な舞台設定で、ポイントが高く、
最初から読者を引き込みます。

「日本族」という言い方もさもありなん。
中国人からの差別もリアル。
ほとんどの日本人は社会の底辺で暮らし、
伏見稲荷はスラム街と化しています。

主人公は、家出娘の桐之宮稲荷。18歳の娼婦。
そして彼女にとりついたのが神さまの「ウガ」こと
宇迦之御霊神(うがのみたまのかみ)。
稲荷神社の信仰対象です。

稲荷とウガ。
絶妙なペアとなるのですが、もちろん稲荷にとっては
迷惑な存在でしかなく、ウガがいるために
ヤタこと「賀茂別雷神(かもわけのいかづちのかみ)」と対決したり
同じ娼婦友だちの華にとりついた強力な神様と
戦わなければならなくなります。

そこに稲荷や華の恋愛、
稲荷山の女王と呼ばれる娼婦の女王マリリンの過去などが
組み合わされて、稲荷の成長物語になっています。

物語展開は細かなところでご都合主義。
テンポよく仕上げるのとご都合主義は
同時進行してしまいがちなので、注意が必要です。

また、最初の頃の独創的な世界観から、
第4回受賞作の『鴨川ホルモー』を彷彿とさせてしまう展開で
損をしている上に、ありきたりな展開にシフトしていってしまいます。

ただ基本的な小説のセオリーは抑えていますので
次回作に期待していますし、
ボイルドエッグズは新人作家を育てますので
叶泉がどんなふうに化けるのかも楽しみです。



セブンネットショッピングの『お稲荷さんが通る』へ
icon『お稲荷さんが通る』
icon
叶泉
orenge-yajirushi.gif Amazon.co.jpの詳細ページ
green-yajirushi.gif 楽天Booksの詳細ページ
yellow-yajirushi.gif bk1の詳細ページ


posted by かつき at 12:17| 新人賞受賞作書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする