花村萬月・松浦理英子特別賞作
「狭い庭」 合原壮一朗(ごうばる そういちろう)
17歳男子高校生の作品で、 はるほど10代の恥ずかしい自意識過剰と 自己愛満載の小説。 日記帳を買い求め、それに日々記す自分にうっとりし、 夢に見た内容に拘泥する「僕」。 ガールフレンド(?)セロナがおり、 ともに過ごす時間をそれなりに楽しんでいます。 家では、新しい母親がやってきたという 大きな事件を大げさに、しかし淡々と受け止めます。 (「ああ、あなたは、新しいお母さん」は傑作) それでいて、両親に対する敬語での語りかけを 地の文でおこなってしまう。 これはナルシストな自分のカモフラージュでしょうか。 新しいお母さんの「もも子さん」もまた変わった人物で 夕食後、一人勝手にパンを食べ始め、 (しかも初めて一緒に食卓を囲んだ食事!) 朝になる頃、一人、居間に座っています。 彼女の来歴も、他の家族の心情も ほとんど説明せず、放り出しています。 家には祖母もいるので、普通は複雑なことになりそうなのに そんなことにはなりません。 自分への執着を内包しながら、 外側から見るとそっけない男子高校生。 空気感に色を感じるナイーブな精神の持ち主。 |
