「ディヴィジョン」 奥田真理子
生まれた時からしっかりとした意識と記憶を持つ 超人的な主人公は、癇癪持ちで 発作を起こすと背中に猿毛が生えるという特殊体質。 これが背骨に沿ってなら「竜」なのに、 とその差異に笑いがこみあげました。 というのも、大阪弁の語り口調は自虐ネタと 母親への異常な罪悪感と ねじ曲がったファザーコンプレックスで固められ、 さらによじれた初恋の人ゆずるとの 友だち以上彼氏未満の一生の関係を綴っていきます。 端折りながらではあるものの、一生の物語を 100枚程度に収めてしまう暴挙と腕に感心しました。 「人の一生なんてこれだけのもの」と提示されたかのような あっけなさと軽さがいい。 著者独特の語り口と自虐ネタもどこかで尽きるかと思えば、 単調になることもありますが 次々に人生をカットしていくので気にならず 最後まで読ませます。 「一生懸命書きました」という感じがつきまといますが とてもおもしろく、楽しませてくれる受賞作でした。 このところ、文学界新人賞は外国人受賞者が相次いだので 日本人の意欲的な作品に好感を持ちました。 |
