『犬はいつも足元にいて』 大森兄弟
2001年綿矢りさ(17歳)、2004年三並夏(15歳)、 2005年中山咲(17歳)と10代の受賞者を出してきた文藝賞。 この頃、文藝賞の受賞作にサプライズがない、と思っていたら 今回は兄弟合作が受賞しました。 犬好きでもないのに、父親に押しつけられるようにして 犬を飼い始めた「僕」。両親はすぐに離婚し、 犬の世話は僕一人の仕事となります。 その犬とも意思の疎通はなく、ペットというよりも やっかいな「何か」でしかありません。 そんなうっとうしい人生の「僕」は、中学に入り サダという粘着性のある同級生と知り合います。 クラスで浮かないようにするにはサダといるしかなく、 さらに鬱陶しく、イライラする毎日。 主人公と他者との関係性が「嫌悪感」から「悪意」に発展していきます。 サダと僕の「悪意」の応酬となる終盤、 犬が好んで掘り当てる「腐った肉」が再登場し、 ここで読者はさらに厭な気分を味わいます。 「腐った肉」を目指す犬、それに引っ張られる僕。 僕を待ち伏せして、結果「腐った肉」に近づくサダ。 「腐った肉」が埋められた広場になぜかいる巨体の男。 腐臭を放つ肉と人の関係性にイライラし、しかしなすすべもなく。 タイトルから想像されるかわいらしさをいい意味で裏切りっており、 底知れぬ兄弟の創作に戦慄します。 |

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