『RANK』 真藤順丈
道州制が施行されて、関東州は異常な人口増加を遂げています。 2012年、一般市民がインターネットで集まった暴徒たちに 虐殺される事件から始まる、「混沌の冬」と呼ばれる一連の騒動が起きます。 政府は治安が悪化した関東州に「眼」と呼ばれる監視カメラを設置し、 州民に「ランク」をつけ始めます。「順位査定プログラム」の始まりです。 査定により下位層に落ちた人は「執行当該者」と呼ばれ、 公安、SAT、機動隊、組織犯罪対策本部などから集められた 「特別執行官」によって、脳神経を殺す点眼薬によって消されます。 極めて異常な世界のなかで、残虐すぎる特別執行官・佐伯と お人よし過ぎる特別捜査官・春日を中心に描いていきます。 延々と続くバイオレンスシーンにうんざりしつつも、 「ランク評論家」や、このシステムの犠牲者ともいうべき、 監視と評価により精神失調状態に陥った「管理障害者」など、 世間のあり様をリアルに描き出し、 そのたびにページをめくらされました。 特殊な世界を、特異な人々で描き出した意欲作ですし、 2008年に新人賞を4つとった注目の新人作家が、 これだけのものを書いたことは驚嘆に値するのですが 登場人物の誰にも共感できない長篇小説は読むのがつらい。 帰結も世界を「脳組織」に、人々を「細胞」に当てはめた論理は わかるようでわからない。中間層の人々をクローズアップするのは 確かに時代的なテーマだと思うので、ぜひ別の作品で このテーマをもう一度、提示してほしいと感じました。 |
真藤順丈



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