「おひるのたびにさようなら」 安戸悠太
婚約者の実家(山のなかにある家)にいる莉加。 なぜか家が揺れるのに、ほかの家族は誰も気にしません。 これは昼の連続ドラマのなかの物語で、それを会社員の真司は 勤務中、耳鼻科の待合室で毎日見ています。 病院なので音は消してあり、真司は内容を想像し それを会社の女性社員二人に語るのが日課です。 ある種のゲーム感覚。 この莉加を演じるみどりが、ドラマのアテレコによって 莉加の本心を理解したり、莉加の姪にあたる麻里の物語が 始まったりして、小説は現実とドラマが入れ子細工になっていきます。 この入れ子構造をきちんとした裏と表、ネガとポジにしなかったのがいい。 それでも莉加が幸せだったり不幸だったりするので 整合性がうまれて、破綻しません。 最後のからくりは想像できてしまいましたが、 作者の企みをおもしろく読みました。 |
安戸悠太

