「聴き屋の芸術学部祭」 市井豊
芸術学部に通う柏木は、人の話を聴いてあげる「聴き屋」という いわばボランティアをしています。学部祭でも、 所属する文芸サークルのブースの片隅で「聴き屋」を開店。 その学祭の最中に校舎でボヤがあり、友人の川瀬が入ってしまいます。 変わりの者の彼について行った柏木は焼死体を発見。 事情聴取を終えた彼の元には、「聴き屋」常連たちが 自分がいかに火事にあったか、この事件をどのように 思っているかを語りにきます。 「聴き屋」は、人の愚痴を聞く、うんざりする商売(?)であり 受動的で、生産性がないかと思ったら 裏返せば情報が集まるということに着想した解決がうまい。 女装癖の川瀬に、イジイジした森里など 登場人物のキャラクターが物語の必然となっていてムダがありません。 森里が憎めないキャラになっているのも好感が持てます。 小説のレベルは一昨年だったら大賞でした。 佳作になってしまって残念です。 |
