「砂漠を走る船の道」 梓崎優
塩を求めて旅をするキャラバンを取材する目的で 雑誌記者の斉木はサハラ砂漠に足を踏み入れます。 その帰り道、キャラバンの長が突然の風(シムーン)によって 命を落としたことから、殺人事件が相次ぎます。 見渡す限り砂ばかりで、行き交う人も動物もいないという 一種のクローズドサークルの本格ミステリです。 しかも人数が減れば、それだけ ラクダを引く人が少なくなり 砂漠の中では自分の命さえ危うくなります。 緊迫した設定を作り出し、見事にひっくり返すストーリー展開に 驚かされます。これは嬉しい驚きです。 ロマンチシズムや砂漠の民としての誇りなどを描きながら それでもこの道が細々とした、将来のないものかもしれない という現実を織り交ぜ、抒情的に描く前半もいい。 著者はたぶん女性だと思うのですが 本格的なミステリをこれからも期待したい作家です。 |


梓崎優
