「逃げ道」 北野道夫
ところどころのディテールがユニーク。 和式トイレ用シャワー「和ッシュ」(ネーミングがいかにも、ありそう)。 サクラとして販売戦略に加わり、お尻を出し、モニターをする女。 突然、ベランダを突き破り、服を交換する隣の女。 エクセルで小説を書くというアイディア。 主人公の女は大学卒業から入社までの間に 和ッシュのサクラのバイトとして活躍しますが 入社とともに辞めています。 ところが、その和ッシュの健康被害から告発され、会社は倒産の危機。 女は尻を出しているビデオを脅迫のネタにされ 営業の田尻とともに逃亡することに。 隣の服を交換する女も、 女が書いていた小説も著者は放り出したままです。 小説内小説も、碁盤の目の町に張り付けられた自分と ある一定の場所の過去と現在と未来、 仕事の役割の過去・現在・未来を示唆しながら その思考を放り出しています。 読者を引き付けながら、絶対に結論を出さない。 まだまだアイディアだけで勝負しているところはあり プロの作家としては未知数と思えます。 しかも著者には登場人物を裸にさせたがる、という思考のクセがあります。 この方は第104回でも最終選考に残り、 その作品でも、男女が裸で供養の舞の真似事をさせているそうです。 性行為ではないところが、またこの人らしいユニークさ。 その裸への執着が、今後、どう転がっていくでしょうか。 おもしろくなるか、陳腐になるか。 あるいはそれも手放し、別の方向に行くのでしょうか。 |
